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東京地方裁判所 昭和49年(借チ)1051号 決定

申立人

野口真利

右代理人

安藤貞一

相手方

鈴木峯司

右代理人

横山正一

外一名

主文

申立人が相手方に対して金三三万円を支払うことを条件に、別紙目録(二)記載の建物を取毀し、同目録(三)記載の建物を建築することを許可する。

理由

一本件申立の要旨

申立人は、昭和四三年一一月二一日相手方から別紙目録(一)記載の土地(以下、本件土地という)を非堅固建物所有の目的、期間昭和六八年一一月二〇日までの約定で賃借し、右土地上に同目録(二)記載の建物(以下、既存建物という)を所有しているが、右賃貸借契約における現在の賃料は月額二三四五円(3.3平方メートル当り金一五〇円)である。

そして、申立人は既存建物を別紙目録(三)記載の建物に改築すべく計画中であるが、本件賃貸借契約には増改築につき賃貸人の承諾を要する旨の特約があり、相手方との協議が調わないので、賃貸人の承諾に代る許可の裁判を求める。

二当裁判所の判断

(一)  本件申立の当否

本件の資料によれば、前項記載の事実および本件の改築計画が本件土地の利用上相当であり、かつ法令の制限上適法であることが認められ、他に本件改築を不当とすべき事由はない。従つて、本件改築は後記条件のもとにこれを許可することとする。

(二)  附随処分

鑑定委員会は、建物の改築によつてもたらされる本件土地と地上建物の一体としての予想純収益増加分の現在価格を金九二万四二一八円と評定し、右金額のうち慣行的借地権割合による約六五パーセントに当る金六〇万円をもつて借地人に属すべき利益増加額としたうえ、右金額をもつて本件改築に伴う給付金とする旨の意見書を提出する。

当裁判所も、本件改築については、当事者間の利害の調整をはかるため、申立人に財産上の給付を命じることを条件としてこれを許可するのが相当と考える。しかしながら、鑑定委員会の意見による右金額は土地・建物についての期待利回りなど将来の必ずしも確定し難い要素を基準とするものであるのみならず、借地上の建物の改築という主として借地人の寄与によつて生ずる将来の予想純収益増加分につき、結局はその全部を土地賃貸人に帰属せしめることになつて不合理というべく、右意見には同調できない。そこで、当裁判所としては、右給付金については従来の裁判例の傾向、本件賃貸借の従来の経過等の諸事情を考慮のうえ、鑑定委員会による本件土地の更地評価額一〇七〇万七〇〇〇円に対して約三パーセントに相当する金三三万円をもつて相当と認める。

なお、賃料については、鑑定委員会の意見に徴して現段階では改訂の必要はないものと認める。

よつて、主文のとおり決定する。

(鷺岡康雄)

〈別紙目録(一)(二)(三)省略〉

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